近世の村の古文書のうち、村人どうしの文書を読むときに、人物の特定などができると、「社会生活史」的な理解が深まる。
人物の特定とは、複数の文書に登場する同名の者が同じ人物かどうか、その親子関係、家族・親類関係、苗字、副業、資産や村役などである。今の誰それさんの先祖だということになる。

明治五年の新戸籍。その写しがあれば、「父○兵衛文化○年生れ」などと記載され、幕末の○兵衛との関係が想定でき、宗門人別帳を遡ってゆくこともできる。同名なら同一人物の可能性が高いが、親子2人の名が同じ場合もあり、その場合は親子か同一人物かである。印鑑は諱を彫ることが多く、印章が同じなら同一人物だ。
天保のころの農間渡世(副業)調べの記録と、明治の戸籍が同定できれば、明治の住所を見て、やはり街道脇だったかとわかる。幕末の弥左衛門と明治の弥惣八が同一人物らしいとか。重要な家は、墓誌を訪ねて先祖の名を確認できるし、現代に伝わる屋号も重要である。

連印帳などの並び順は、現代の回覧板の順番のように、無駄のない並びのものがある。事前に半分ほど家が特定できていれば、並び順を見てほとんどの家を特定できることもある。

寺の寄付の世話人や寺の総代などの役は、同じ苗字の中の代表者であることが多い。普通は本家と呼ばれる家が役につくが、本家が傾いたところは別の家がなり、一家総代(いっけそうだい)などともいう。寺の仕事は先祖供養が主なので、同苗ごとに代表一人を決めるのは合理的だ。寺や墓地に関する覚書には、苗字が書かれていることもある。
明治五年の戸籍以後は、神社関係の寄付名簿を辿れる。寄付名簿は石に彫ってあることもあり、金額の多い家はそれなりの家である。

それぞれの家系図のようなものもある程度は作れるようになるかもしれないが、
問題なのは、家がわかっていると、トラブルなどに関する古文書を、論文に添えて公表するのに躊躇してしまうことである。第三者に見てもらって、判断をゆだねる方法もある。

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